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月刊「アフタヌーン」で好評連載中の「なるたる」の原作者・鬼頭莫宏先生と、その原作を自分なりに“翻訳”してアニメ化したという飯野利明監督。お二人に作品のテーマやアニメ化にあたっての苦労などについて、お話をうかがいました。

☆初めて脚本を読まれた時の感想をお聞かせください。

原作を事前に読んだ時に、これをまともにアニメ化するとかなりの情報量になってしまうと感じていたので、13本でどう納めるのか気になってたんですよ。そうしたら、最初にプロット(構成)をもらった時、うまく流れができていて…。鬼頭先生にうまく内容を取捨選択していただいたと思っています。



☆今日は2回目のアフレコでしたが、声優さんの演技はいかがでしたか?

シイナというキャラクターがいちばんポイントとなる存在で、彼女に関わるキャラクターは、言ってみればシイナと対の関係、表裏になる形で存在しているんですよ。シイナが話すセリフっていうのは、彼女のフィルターを通して、他のキャラクターに跳ね返っていくんです。台本にあるセリフは口に出すと確かにそのとおりの言葉なんだけど、実は“その通りのことは言っていない”。言いたいことは“本当はそうじゃない”んだってことを、アフレコのたびに声優さんにお願いしているんです。苦労してもらっていますよ(笑)。“表面に見えていることと、隠されていることを同時に明確に表現する”ということをお願いしているわけで、声優のみなさんには、本当に「ありがとうございます」という感じですね。思い通りに進んでいると思います。



☆原作からアニメ化にあたって、監督のこだわりがあれば教えてください。

会話のシーンとか、セリフを大事にしたいと思っているので、セリフはなるべく原作から拾うようにしています。アニメ化にあたっては、私自身の言葉では、“翻訳”という形で演出していますね。具体的にどんな声を演出するかを決定するには、自分の中で翻訳が必要なんです。原作から読み取ったセリフのニュアンス……。それを伝えたいし、そこから見ている人に何かを汲み取ってほしいと思っているんです。

そう言う意味では、原作よりもアクション、動きを抑えるようにしていますね。例えば、あるキャラクターの心情を表現するのに、セリフを聞かせたい時は、余分なBGM(音楽)はつけないようにしたり、あえてアングルを外して表情を消して、声だけを流したり…。情報が少ないことによって、視聴者がいろんなことを想像できるじゃないですか。

誤解を恐れずにいえば、録音スタジオで演じる声優に、「このキャラは今こんな感情を持っている」っていう説明は確かにしているけれど、それと同じことが、必ずしも視聴者に伝わるとは限らないし、伝わらなくてもいいと思っているんです。「コレですよ!」って言えれば簡単なんですけど、「なるたる」っていう物語は、さまざまな要素を含んでいて、ひとつに決め付けることができませんからね。

でも、その場でわからなくてもいいんです。あとで、「この前のシーン、セリフはこういうことだったんだ」と思ってもらえれば。そういう意味でも、全部通してみなさんには見ていただきたいですね。




☆最後にメッセージをお願いします。

「なるたる」の原作のテーマは深いところがありますが、アニメ化にあたっては、先ほども言ったように、“翻訳”する気持ちで映像化しています。人それぞれ、いろいろな見方ができるように作ったつもりです。逆に見づらいところがあるかもしれませんが、何かを感じていただけたらと思っています。元気なシイナがどんな経験をして、どう成長していくか、見守っていただけたらと思います。よろしくお願いします。
☆アフレコ現場をご覧になった感想をお願いします。

1話を見た瞬間から、僕の頭の中ではシイナが真田アサミさんの声でしゃべり始めましたね。とても新鮮な感覚です。100点っていうとウソ臭いので、赤点にならない程度、まあ75点っていう感じでしょうかね(笑)。



☆アニメ化のお話があった時、どう思われましたか?

正直、ありがたかったですね。ただ、原作者の立場から考えて、「アニメ化できるの?」とも思いましたね。とにかく最初は不安でしたよ。例えば原作を元に台本をつくる時、ストーリーとして骨格となるシーンに、表現として“ヤバイ”部分、映像表現として描き難い部分があった場合、それをどうするのかとかね…。 もし省いてしまうと、後々話が伝わりにくかったりしてしまうだろうし、じゃあ直球勝負でいく場合、それをわかりやすく描けるのかどうかとか…。制作現場は苦労されるだろうなと思いましたね。



☆アニメ化によって、オリジナルとはテーマやストーリーが変わってしまうという不安はありませんでしたか?

原作は所詮、原作ですからね。先ほど、どうアニメ化するのか不安だったって言いましたけど、原案っていうレベルで、例えば町のおじいちゃんや、引きこもりの子供がトラブルにあって、シイナとホシ丸が助けるっていう、そんなストーリーでもいいのかなって考えたことがありましたからね(笑)。

原作のアニメ化っていうのは「何をプラスして何をマイナスするか?」だと思うんですよ。僕自身、結果(作品)に対して、どんな試行錯誤がされて、どういう経緯があって、どんな結論に至ったのかっていう、自分の志向とは違う結果が見えること、それを考えることが楽しいですね。料理人によって同じ食材を使ってもできあがるものが違うように、飯野監督の料理の仕方を見たいと思ったし、後々、自分の方に何がしかのキックバックがあるだろうと思って、楽しみにしているんです。




☆子供が身近に死を感じるような、そんな描かれ方をしているように感じましたが?

それは意識的にそうしましたね。自分なりの不満っていうと陳腐ですけど、死について、いろいろとストーリーに織り交ぜるようにはしています。



☆「なるたる」とは関係ないのない質問なのですが、最近、鬼頭先生が興味を抱かれたものは何かありますか?

個人的に好きなものはと聞かれる、量が多すぎて困りますね。それに、ひとつをあげるとそれで僕自身について類型的に見られるのも嫌ですし(笑)。強いて言えば、最近、知り合いに進められて見た、ヘンディー・ダガーというアメリカ人の展示会ですね。ただ、僕が惹かれたのは作品ではなくて、彼の人生、彼が“生きてきた感情”っていうものなんです。

自分のためだけに小説を書いて、その小説に挿絵を書いて、孤独に死んでいったアメリカの老人なんです。アパートの大家が遺品の中に彼の作品を発見して、たまたま大家が現代美術を嗜んでいる人物だった。それでようやく彼の名と作品が世に出たんですよ。

彼のような生活をしたいとは思わないけれども、読者を想定せず自分のために書くみたいな、そこに創作の原点みたいなものを感じましたね。彼はどんな感情を抱きながら生き、死んでいったのか? 彼の感情の流れ、動きみたいなものについて、興味がありますね。




☆それでは最後にWebをご覧のみなさんにメッセージをお願いします。

作品は見る人それぞれのものです。そこから何を汲み取るかは自由ですから、自分にとって必要なもの不必要なものという形で受け取っていただければと思います。

監督から「見づらい部分もあるかもしれない」という発言がありましたが、原作の方がもっと軸がぶれた感じで、わかりづらくなっていると思います。その点、アニメの方が、狙いどころが絞られているというか、わかりやすいのではないでしょうか。エッセンスをアニメで楽しんでいただいて、そのあと原作コミックを読んでいただければ幸いです。